Doja Catの「Say So」・「Kiss Me More」とアジアのミュージシャン(Rainych Ran・tofubeats・キズナアイ・竹内まりや)|シティポップ
日本で有名というわけではないけれども、世界に訴求力を持つ日本語の歌唱動画がある。
1. Rainych「SAY SO」
アメリカ人歌手Doja Cat(ドージャ・キャット)のヒット曲「Say So」、それをインドネシア人YouTuberであるRainych Ran(レイニッチ・ラン)がカバーしたものだ。しかも日本語で。なぜそんなにもインターナショナルなのだろうか。この興味深い謎を探りながら、関連楽曲を紹介するのが、本記事の目的だ。
2. Doja Cat「Say So」
アメリカの高校をドロップアウトしたサブカルチャー(日本のものを含む)好きのDoja Cat。彼女が初めてビルボードホット100で首位を獲得したのがこの楽曲だ。グルーヴィーな1980年代風の雰囲気。2020年前後にその雰囲気に皆が惹かれるのは理由がある。大人はその時代への哀愁を感じ、そのとき世界に存在していなかったDoja Catと同世代の若者は目新しさを感じるからだろう。2020年前後に80年代風のファッションが流行しているのと同様に。
Appendix A. 竹内まりや「Plastic Love」
Appendix B. 松原みきの「真夜中のドア ~ Stay with Me」
竹内まりやの「Plastic Love」(1984年発表)や松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」(1979年11月発表)などのシティポップ楽曲が再ヒットしていることも、そのような80年代リバイバルに共鳴している。
ちなみに、「シティポップとは、(1)メロディにうねりがあり、(2)特にベースにグルーヴ感があり、(3)ドラムにリバーブがかかっていて、(4)シンセサイザーの人工的な音色が用いられていて、(5)サックスのソロやブラスのバッキングで支えられている、日本のあるいは日本インスパイアの音楽ジャンルである。」
Appendix C. Rainych「Plastic Love」
実はRainychもその「Plastic Love」をカバーしている。
3. Doja Cat「Say So – Doja Cat Reacts To Rainych Japanese Cover Side By Side」
さて、「Say So」のオリジナル歌手であるDoja Catに戻ろう。インターネットでのライブ配信中、彼女はファンからRainychなるYouTuberが「Say So」をカバーしていることを教えてもらう。本記事の冒頭に紹介したものだ。そのときの彼女のやや大袈裟だが共感できるリアクションがこの動画に刻まれている。このこともあり、Rainych版の「Say So」の動画の再生回数が増加した。
4. Rainych「Say So (tofubeats Remix)」
インドネシア人のRainychの日本デビュー曲がこれ。気鋭のトラックメーカーtofubeatsによってリミックスされジャパナイズされたものだ。(MVに登場する女性は、Rainychではなく、TikTokerの景井ひな。)Rainychは日本の音楽、特にアニメ主題歌が好きなようで、いわゆる歌ってみた動画を多数アップロードしている。Rainychの日本語の発音は驚くほど自然なのだが、彼女はまったく日本語を話せない。
Appendix D. tofubeats「Plastic Love」
Appendix E. tofubeats「No.1 feat. G.RINA」
そのtofubeatsも竹内まりやの「Plastic Love」をカバーしている。ただ、tofubeatsの才能を確認するなら「No.1 feat. G.RINA」のほうがいいかもしれない。彼のリズム感と美学が垣間見える。
Appendix F. tofubeats「Window (Ikkubaru Remix)」
偶然にも、tofubeatsの「Window (Ikkubaru Remix)」はシティポップに大きく影響を受けたインドネシアのバンドIkkubaruによってリミックスされたことがある。
5. キズナアイ「Say So」
話を戻そう。「Say So」は様々なVTuberによってカバーされている。この動画は、日本語なまりのキュートな英語ラップが特徴的な、トップVTuberのキズナアイによるカバー。Nyanners、Lumi Celestia、Bao、Gawr Guraなど、多数の日本国外の人気VTuberにもカバーされた。
6. Rainych「Kiss Me More」
7. Doja Cat「Kiss Me More ft. SZA」
なお、Rainychは、またも世界的な大ヒットとなったDoja Catの「Kiss Me More」も日本語でカバーしている。
まとめよう。日本文化が好きなインドネシア人RainychがDoja Catの出世作「Say So」を英語詞のかわりに日本語詞をつけたものでカバーした。Doja Catに言及されてRainychの動画の再生回数が増加し、日本のtofubeatsによる編曲で日本デビューした。その後も、日本語版「Say So」は日本国外のVTuberなど様々な歌手によりカバーされている。今後も、Rainychや海外YouTuberの日本語カバー曲に目が離せない。