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歌手としての花澤香菜のおすすめ楽曲を一覧にして紹介!中国をはじめ世界中で人気の「恋愛サーキュレーション」などのアニメキャラクターソングや声優業だけじゃない!|渋谷系


歌手としての花澤香菜は過小評価されているかもしれない。

Appendix A. 花澤香菜「恋愛サーキュレーション」

日本国内での人気はもちろん、日本製アニメの海外輸出と並行して、中国、欧州、北米などでの人気も獲得し、今や世界的人気を誇る声優、花澤香菜。2010年代随一と言っていいほどの彼女の声優としての存在感は、彼女の歌手としてのキャリアを覆い隠してしまうとしても無理はない。花澤の代表的楽曲と言えば、大人気アニメ「化物語」のキャラクター千石撫子として歌った劇中歌の「恋愛サーキュレーション」になるだろう。歌い手のなみりんによる本曲のカバーはYouTubeで約1億回再生、インドネシア人YouTuberのRainychのカバーは約500万回再生されているほどだ。

しかし、花澤という歌手は、声優としての業績をなかったことにしてみたとしても、歌手として魅力的な存在なのだ。実際、花澤は、キャラクターソング以外にも、大量の良曲を持ち曲としている。本記事ではサブスクリプション解禁となり聴きやすくなった彼女の曲を紹介する。

Appendix B. なみりん「恋愛サーキュレーション」

Appendix C. Rainych「恋愛サーキュレーション」

これらはなみりんとRainychによる「恋愛サーキュレーション」カバー。

次の記事でもRainychについて触れているので参照して欲しい。


1st Album「Claire」

1. 花澤香菜「星空☆ディスティネーション」

1st Album「Claire」収録。花澤香菜の透き通った声と良質なやさしいポップミュージックが完全調和する彼女のデビュー曲。プロデュース、編曲、作曲、作詞は北川勝利(ROUND TABLE)、ストリングスは宮川弾(元ラヴタンバリンズ)による。

北川勝利や宮川弾は、CymbalsやNONA REEVESなどのバンドメンバーと共に、Modern Music Troopやトラベリングライトといった早稲田大学の音楽サークルで育った音楽家だ。彼らの楽曲には、山下達郎(元シュガーベイブ)などのシティポップや小沢健二(元フリッパーズギター)などのギター・ポップの影響が見られる。実際、土岐麻子(元Cymbals)の父親は山下達郎バンドのサックス奏者である土岐英史だし、沖井礼二(元Cymbals、TWEEDEES)は頻繁に彼から影響を受けたことを語っている。さらに、ROUND TABLE、ラヴタンバリンズ、Cymbals、NONA REEVESなどは、フリッパーズギターとまとめていわゆる渋谷系音楽としてカテゴライズされることがよくある。

ただ、花澤香菜の楽曲はシティポップというよりはギターポップあるいは渋谷系として分類されるのが適切だろう。グルーヴ感や裏拍を強調するアレンジメントになっておらず、むしろかさわやかさやチャーミングさを押し出しているからだ。

ところで、渋谷系やシティポップとは何だろうか?

  • 「渋谷系とは、(1)力の抜けたボーカル、(2)軽快なギターサウンド、(3)陽気なコーラス、(4)タンバリンやハンドクラップ、(5)激しいキーボードやオルガン演奏に特徴づけられる、日本のあるいは日本インスパイアの音楽ジャンルである。」
  • 「シティポップとは、(1)メロディにうねりがあり、(2)特にベースにグルーヴ感があり、(3)ドラムにリバーブがかかっていて、(4)シンセサイザーの人工的な音色が用いられていて、(5)サックスのソロやブラスのバッキングで支えられている、日本のあるいは日本インスパイアの音楽ジャンルである。」

シティポップと渋谷系の特徴づけと違いについては次の記事で論じているので、参照してほしい。

Appendix D. Round Table featuring Nino「Puzzle」

花澤香菜をプロデュースする前から、北川勝利はアニメ業界での編曲および作曲の実績を積んできた。ひきこもりからから抜けられないように日本ひきこもり協会(NHK)に陥れられているとの陰謀論を妄想するひきこもりの主人公が前進するアニメ「NHKにようこそ」。そのオープニング曲「Puzzle」はそのうちのひとつだ。

2. 花澤香菜「Silent Snow」

冬の張り詰めた緊張感と暖かかな期待が同居する、花澤香菜4枚目のシングル。編曲、作曲、作詞は同じく北川勝利。1st Album「Claire」収録。

3. 花澤香菜「新しい世界の歌」

花澤香菜の1枚目のアルバム「Claire」の11曲目、羽が生えているような浮遊感のあるボーカルと唸るベースが特徴的な「新しい世界の歌」。編曲、作曲、作詞、ベース演奏、コーラスは、北川勝利と音楽サークル時代から親交がある沖井礼二(元Cymbals、TWEEDEES)。

4. 花澤香菜「happy endings」

神前暁による編曲・作曲の花澤香菜3枚目のシングル。神前暁(MONACA)はスマッシュヒットアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の劇伴(「God knows…」含む)の担当者であることで名が通っている。神前暁は時折Cymbalsからの影響を語っている。1st Album「Claire」収録。


2nd Album「25」

5. 花澤香菜「マラソン」

6. 花澤香菜「Merry Go Round」

花澤香菜の2枚目のアルバム「25」に移ろう。1曲目の少々アンニュイで孤独感のある曲の編曲と作曲は北川勝利。2曲目の編曲は宮川弾、作曲は北川勝利という「星空☆ディスティネーション」で組んだ二人。宮川弾の作品に特徴的なわくわくするような編曲。


3rd Album「Blue Avenue」

7. 花澤香菜「Nobody Knows」

3枚目のアルバム「Blue Avenue」の3曲目であるこの曲は、ニューヨークで現地のミュージシャンとレコーディングされたほどの気の入りよう。作曲は北川勝利による。注目すべきは奇才、北園みなみ(旧大沢建太郎、旧Orangeade)によるアレンジメント。

Appendix E. Orangeade「わたしを離さないで」

Appendix F. Orangeade「Over Again (Osawa Kentaro Mix)」

脱線になるが、これらは北園みなみが大沢建太郎名義で旧Orangeadeに属していたときに制作した2曲。彼はLamp「A都市の秋」の編曲もしているので、ぜひ聴いてみてほしい。どれも彼の圧倒的にオリジナルな才能があふれ出ている。

8. 花澤香菜「We Are So in Love」

沖井礼二同様Cymbalsの一員であった矢野博康による編曲、作曲、作詞。花澤香菜の透明感のあるボーカルを支える、泡が弾けるような伴奏が小気味いい。

Appendix G. Cymbals「RALLY」

Cymbalsの代表作のひとつ。ベース沖井礼二、ドラム矢野博康、ボーカル土岐麻子。


4th Album「Opportunity」

9. 花澤香菜「Kaleidoscope」

10. 花澤香菜「Seasons always change」

花澤香菜の4枚目のアルバム「Opportunity」からの2曲。前者は沖井礼二、後者は矢野博康による編曲と作曲。両曲とも、より地声に近い歌唱法をとるようになった花澤香菜の声が楽しめる。


5th Album「ココベース」

11. 花澤香菜「Mitten」

佐橋佳幸が北川勝利からプロデューサー役のバトンを渡され制作した、シンガーソングライターからの楽曲提供やJ-ROCKテイストで満たされた花澤香菜5枚目のアルバム「ココベース」の中からの一曲。その編曲は岡村靖幸と佐橋佳幸、作曲は岡村靖幸による。オプティミスティックな調子に見え隠れするファンキーで粘り気のある岡村靖幸のテイストを、清廉な花澤香菜のトーンで健全な方面に方向転換させるような、しかしそれにもかかわらず各々のパーソナリティが打ち消されることなく生き残っている、絶妙なバランスで成り立っている曲。

Appendix H. 岡村靖幸「彼氏になって優しくなって」

いつものねちっこさ全開の岡村靖幸の曲はこのようなものだ。


Digital Single「magical mode」

12. 花澤香菜「magical mode (Chinese Version)」

中国語圏のアニメファンに熱狂的な支持を得ている花澤香菜による初の中国語での歌唱。神前暁およびOliver Good(MONACA)が編曲、神前暁が作曲をしている楽曲。花澤香菜の地声が活かされつつも、アニメやゲームに代表される、現代日本に見られるような独特のポップさが表現されている。


本記事では花澤香菜の歌手としての活動とその周辺人物をとりあげた。彼女の圧倒的な人気がなければ、その場限りの売り上げに右往左往しない、質を求めたトラックが蓄積されていくことはなかっただろう。歌手花澤香菜は、声優としての実力も相まって今後も日本のポップカルチャーを牽引していくに違いない。