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YOASOBIメンバーのAyaseと幾田りらのキャリアと楽曲を紹介|J-POP


YOASOBI(ヨアソビ)は、アメリカ生まれでボーカル担当の幾田りら(ikura)と、山口県出身で作詞・作曲・編曲・キーボード担当のAyase(アヤセ)からなる二人グループだ。NHK紅白歌合戦に出場するなど、シングル「夜に駆ける」やアルバム「THE BOOK」を通じて日本で人気となった。それのみならず、同時に海外でも人気を獲得するようになっている。

YOASOBI「夜に駆ける」

YOASOBI「Into the Night」

YOASOBIは、しばらく歌詞に日本語以外をまったく使用していなかった。しかし、「夜に駆ける」の英語版である「Into the Night」の発表したことで、グローバルな活躍をさらに拡大していくだろう。YOASOBIは、そんな勢いに乗っているバンドだ。

だが、YOASOBIはなぜ「売れた」のだろうか? YOASOBIはいったいどのようなグループなのだろうか? YOASOBIのメンバーはどんな経験をしてきたのだろうか?

この記事では、そんなYOASOBIのメンバーであるAyaseと幾田りらの楽曲と経歴を紹介し、YOASOBIというグループの性質を究明する。その過程で、幾田りらもAyaseも様々な形態で音楽に携わってきたことと、そして二人とも歌が歌えるし作曲や作詞ができるということを強調していく。


幾田りらのキャリアと楽曲

幾田りらには、YOASOBIメンバーとしての顔の他に、(1)シンガーソングライターとして顔と、(2)アンサンブル〈ぷらそにか〉のメンバーとしての顔がある。

(1)シンガーソングライターとしての幾田りらのキャリアと楽曲

幾田りらは、YOASOBI結成の4年前からシンガーソングライターとして音楽に携わっていた。

幾田りら「無題」

この動画は、幾田りらが15歳のときに作成した無題のオリジナル曲のものだ。このころからの活動があってこそYOASOBIの成功があるのだと感じさせる。

幾田りら「Answer」

幾田りら「ロマンスの約束」

シンガーソングライターとしての幾田りらの曲は、Ayaseの作品とは趣が異なる、グルーブ感のないJ-POPの王道ソングである。

(2)ぷらそにかのメンバーとしての幾田りらのキャリアと楽曲

幾田りらは、「Into the Night」によるYOASOBIの本格的な世界進出の前まで、様々な形態をもつ、YouTubeにカバー動画を多数アップロードしているアンサンブル〈ぷらそにか〉のメンバーとして活躍していた。

ぷらそにか「あなた」

ぷらそにか「初恋」

ぷらそにかによる宇多田ヒカルの「あなた」と「初恋」のカバー。ぷらそにかによる楽器演奏は概してメリハリがなく平坦だが、幾田りらの哀愁があるのに芯のある声と、正確なトレモロを発する技術が際立つ。

Appendix. 宇多田ヒカル「あなた」

Appendix. 宇多田ヒカル「初恋」

これらは宇多田ヒカルによる原曲。


Ayaseのキャリアと楽曲

Ayaseには、YOASOBIメンバーとしての顔の他に、(1)バンド〈Davinci〉のボーカリスト啓一郎としての顔と、(2)ボーカロイドプロデューサーとしての顔と、(3)ソロシンガーとしての顔と、(4)楽曲提供者としての顔がある。

(1)バンド〈Davinci〉のボーカリスト啓一郎としてのAyaseのキャリアと楽曲

Ayaseは、高校生時代に山口県で〈Davinci〉というバンドを結成し、〈啓一郎〉名義でボーカリストとして参加した。その後、東京に軸足を移し、10年弱バンドで活動していた。人気が顕著になることはなく、最終的にはAyaseの病気のために解散した。

Davinci「The Bloom」

Davinci「Departure」

Davinciの楽曲では、YOASOBIの楽曲の場合と同様に、メロディーメーカーとしてのAyaseの才能が光る。さらに、驚くべきなのは、YOASOBIでは一切歌声を披露しないAyaseがボーカリストであるということだ。これらの曲では、Ayaseの芯のあるボーカルを味わうことができる。

その一方で、現在のAyase作品のテイストがDavinciの楽曲のテイストと異なることもよくわかるだろう。これらの曲のようなロックテイストよりも、YOASOBIで採用しているようなコンピュータを用いた打ち込み音楽の方が、Ayaseの同時代的な作曲センスを発揮できるし、日本国内外の近年のトレンドに乗っている。

(2)ボーカロイドプロデューサーとしてのAyaseのキャリアと楽曲

Ayaseは、10年弱所属したバンドが解散した後、一人になった。音楽活動を諦めてもおかしくない状況だった。そんな中Ayaseは、音声合成ソフトウェアを用いて、ストックされた声のデータ(〈初音ミク〉など音源)を合成あるいは編集し、コンピュータに「歌わせて」、自分で編曲・作曲した伴奏を合わせることにより、一人で音楽活動を続けていくことを決心した。いわゆる、ボーカロイドプロデューサー(ボカロP)となったのだ。

初音ミク「幽霊東京」

初音ミク「夜撫でるメノウ」

これらはAyaseのボカロPとしての仕事だ。初音ミク「幽霊東京」は、YOASOBIにも通じるメロディーのキャッチーさや、リズムセクションの快活さが垣間見られる。初音ミク「夜撫でるメノウ」は、単純な音色を用いたミニマルな編曲だが、それゆえにむしろAyaseのリズムや構成にかんする美的感覚の独特さが顕著にあらわれている。

(3)ソロシンガーとしてのAyaseのキャリアと楽曲

Ayaseは、ボカロPとして活躍する一方で、自作のボーカロイド曲をソロシンガーとしてセルフカバーし、動画サイトにアップロードしている。

Ayase「幽霊東京」

Ayase「夜撫でるメノウ」

これらの曲でのAyaseのボーカリングは、謙虚で出しゃばらず、セクシーで落ち着いている。音声合成ソフトウェアを使用したバージョンよりも、これらのセルフカバーの方が魅力的に感じる人も多いだろう。実際、これらのバージョンの方がYouTube上での再生数は多い。

(4)楽曲提供者としてのAyaseのキャリアと楽曲

LiSA×Uru「Saikai」

Appendix. LiSA「紅蓮華」

Appendix. Uru「あなたがいることで」 

Ayaseは、アニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」で有名なLiSAと、ドラマ「テセウスの船」の主題歌「あなたがいることで」で有名なUruに楽曲「Saikai」を提供している。そもそも、Ayaseが自身の楽曲を幾田りらに歌ってもらうように尋ねたのが、YOASOBIの成り立ちであり、Ayaseは楽曲提供者としてYOASOBIに参加しているとも言えよう。


ではYOASOBIとはどういうグループか?

まとめよう。シンガーとしての経験だけでなく、ぷらそにかのメンバーとして既存曲を歌う経験もある幾田りらが歌に徹する。そして、バンドメンバーやボカロPの経験を活かして作詞・作曲・編曲するAyaseが楽曲を提供する。しかも、二人とも、歌が歌えるし、作曲や作詞ができるので、互いに何を求めているかも理解できる。そして、二人とも卓越性がありながら謙虚であり、彼らの長所を掛け合わせることで自分たちのポテンシャルを顕在化させた。そのようなグループがYOASOBIなのだ。ここから、なぜ「売れた」かの大きな理由もわかるだろう。つまり、YOASOBIの成功は、結果に結びつくような、確かな努力や下積み、そして才能に基づいているのだ。


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